「日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書」を公表

「がんゲノム医療」に関する全国的な大規模実態調査を国内で初めて実施し、日本におけるがんゲノム医療の課題点を明らかにしました。さらに、患者・市民参画(PPI)という形での患者さん・市民の皆様との協働作業のもと、「日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書」を作成・公表しました。

背景

がんゲノム遺伝子パネル検査が保険収載されて以降、約4年間で5万人以上のがん患者に検査が実施されてきました。患者やその家族ががん遺伝子パネル検査を通して、どのような説明や結果を聞き、検査前後でどのような感想を持ったのか、全国規模での調査はこれまで行われていませんでした。また、がんゲノム医療を提供している医療機関側がどのような課題を感じているかについて、その実態は明らかにされていませんでした。

全国的な大規模調査を実施し、提言書を作成

東京大学医学部附属病院は、厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業「がんゲノム医療推進に向けたがん遺伝子パネル検査の実態調査研究」(研究代表者:瀬戸泰之/課題番号:20EA1006)として、がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議に設置されている各ワーキンググループと連携し、がんゲノム医療中核拠点病院を中心とした協力医療機関と共に、 患者とその家族を対象としたアンケート調査(患者アンケート調査)、がんゲノム医療実施機関を対象としたアンケート調査(施設アンケート調査)を全国規模で実施しました。

アンケート調査の結果から、受検者側、実施者側の双方の視点をもとに、日本におけるがんゲノム医療の課題点を明らかにしました。主な課題点として下記の点が挙げられました。

1)新規の治療到達性の低さ(約1割)
2)検査実施のタイミング(現状は原則、標準治療終了後または見込みに限る)
3)検査に関する情報伝達の手段と内容の難しさ
4)検査や治療到達性における地域差
5)実施機関の負担の大きさ

さらに、患者・市民参画(PPI: Patient and Public Involvement)という形での患者さん・市民の皆様との協働作業のもと、「日本のがんゲノム医療推進に向けた提言書」を作成し、厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課に提出しました。

 

提言書・アンケート調査結果

提言書、アンケート調査の結果は当院のゲノム診療部のWebサイト(下記のリンク)にて公表しています。